問題
私たちは、移動に航空機を利用しますが、安全な運航を確保する為に必要な航空機のメンテナンスが、いかに複雑なものなのかを知り得ません。軍用機メンテナンス・ターンアラウンド・プロセス(航空機の着陸、燃料の補給、再軍備、点検、検査、離陸までの期間)はさらに複雑であり、多数の相互作用および並列のワークフローを含んでいます。さらに、熟練したスタッフはターンアラウンド・プロセスを維持するために必要であり、それは関連するコストに結びつきます。
航空宇宙、防衛、セキュリティ、およびテクノロジー業界の大手企業の1つであるLockheed Martinのエンジニアは、AnyLogicのシミュレーションモデリングを使用し、軍用機のターンアラウンドプロセス全体における意思決定の改善とターンアラウンドタイムへのプロセス変更の影響の評価を試みました。
解決策
モデルを完成させるために、ターンアラウンドタイムプロセスの3つの主な要素:
- フライトラインでの航空機検査
- サインオフ(Signoff) これはすべての検査と給油が完了したことを意味する
- 航空機からダウンロードされたメンテナンスコードの審査及び処理
一旦これらのプロセスを明確にした後、メンテナンスの各段階でのプロセスの記録、確認および理解を可能にするモバイルのアプリケーションとしてモデルは設計されました。このデータ収集ツールはオブザーバーによって使用されました。オブザーバーは保全要員をモニターしました。アプリケーションは、プロジェクトの間に数回修正されました。

ワークフローの各ステップについて、人、リソース、依存関係、およびその他のプロセス定義データが識別されました。モデルに必要なデータには、各タスクの開始時間と終了時間が含まれます。開始時間と停止時間に加え、アプリケーションに記載されていない活動を記録するためのオーディオ録音機能を提供することが重要でした。たとえば、オブザーバーは、業務が予想以上に時間がかかった理由を記録したり、誤って開始ボタンを押したことを記録したりすることがあります。データ収集アプリケーションは非常に柔軟で適応性があります。
航空機のターンアラウンドプロセスは、エージェントベースモデリングおよびシミュレーション環境には実験機能とプレゼンテーション機能が必要なことが明らかになり、AnyLogicシミュレーションモデリングツールはこれらの要件を満たしています。さらに、プレゼンテーションにおいてモデル内のプロセスの可視化は、全てのレベルの開発者および経営管理職に理解しやすく、意思決定に大変役立ちます。
次に、プロセスモデリングで特定されたエージェント、リソース、およびタスクが、複数の可視化とともにAnyLogicのプロセスフローに実装されました。その後、「実装時」プロセスのベースラインモデルが構築されました。それらはデバッグ目的のために決定論的モードで反復的に実行し、同様にシングルおよびマルチランモンテカルロモードで実行されました。結果は経験済みの情報と比較されました。

検証とアップデートを重ねた後、確率論的エージェントベースモデルは、ターンアラウンドプロセスを構成する動的プロセスと相互作用プロセスを捉えることができました。プロセスをより効率的にするために、プロセスステップの削除、プロセスステップの実行に必要な時間の短縮、またはプロセス部分の再定義のいずれかによって、プロセス変更の影響を定量化するための実験が行われました。
モデル使用の実験は次に役立ちます。
- 現在のワークフローの特性を記録
- ワークフローの代替案を探る
- 代替案の影響を予測
成果
モンテカルロ法を含むモデルを用いたさまざまな実験の結果、プロセスにどのような変更を加えると最も違いが出るか、およびその違いの潜在的な範囲が示されました。AnyLogicのモデリングおよびシミュレーションアプローチは、人/機械/ワークステーション間のインタラクションのモデル化に役立つだけでなく、実験前の未知のワークフローの特殊性も追跡しました。
- 従業員は、直線的な作業方法に沿わない動きをします。そのため、ワークフロー内のアクションは同期されず、並行して動作していました。
- プロセスの個々の部分を見る時、明白でなかったタスク間の相互依存が明らかになりました。
- プロセスの単一のコンポーネントの代わりに全プロセシング・パスを見ることで、所要時間に深く係る、真のプロセスを識別することができるかもしれません。
これらすべての情報により、エンジニアはターンアラウンドプロセスのボトルネックを捉え、ワークフローの変更を提案し、航空機のターンアラウンドプロセスに関してかなりの改善を示すことができます。
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