問題:
一般的に海上コンテナ輸送には、遠洋輸送オペレータ、港湾ターミナルオペレータ、およびインターモーダルオペレータ等があります。コンテナ荷降ろし、ターミナル保管、その後通常は陸上輸送でさらに目的地まで輸送されます。遠洋の船舶が遅れた場合、船積みの過程が複雑なため、奥地にあるサプライチェーン(輸送先)は時としてネックになります。
船の遅れは、コンテナの遅れを意味します。さらに列車での配送の場合、コンテナは予定列車に積み込めず、次の列車に積み込むことになり、出荷計画のプロセスが複雑になります。結果、コンテナは遅れて配達され、ターミナルの格納庫は混雑になり、列車は十分に活用されず、関連会社に無駄なコストが発生します。
船の荷降ろしには10時間以上かかることがあるため、船が大きい場合はさらに悪化することになります。この長いプロセスの間に特定のコンテナがいつ荷降ろされるかどうかは不明なため、計画がさらに複雑になります。
このような状況を回避するには、オペレータが積み込み可能な列車に再度予約を事前に行う必要があります(例えば、ドイツのハンブルク港の場合で出発列車の少なくとも1日前)。より効率的に行うためには、オペレータは、到着するコンテナ情報の早期提供(ターミナルおよび目的地の到着時間)を必要とします。
1つの前提は、すべての関係者が予め各コンテナの到着予定時刻(ETA/Estimated Time of Arrival)を知ることで問題がある程度解決できるということです。しかしながら、コンテナETAだけが利用可能な情報では、あまり役に立ちません。なぜなら、コンテナが最初にまたは最後に荷降ろしされるかにより、使用できる貨物列車に違いをもたらすからです。コンテナETAの稼働率は、列車輸送のために積載可能なコンテナの再予約を可能にし、その利用効率を増加させることです。
ドイツのダルムシュタット工科大学の研究者らは、コンテナETAの導入で、コンテナ輸送の世界トップ20港の一つであるハンブルク港の状況を改善するかどうか検討しました。
ソリューション:
研究者は、システム運用2、3ヶ月間をシミュレーションモデルで再現し、コンテナETAの有無にかかわらず性能を比較することにし、国際連合運営機関が実施する次のような3つの政策をテストおよび比較することを決めました。:
- 標準ケース:遠洋運搬船一隻のコンテナのみを扱う。
- 方針1:複数の運送会社からコンテナを扱い、出荷締切期限に近いものから列車で輸送する。
- 方針2:ターミナルに保管している列車積載可能なコンテナ置き場をフォーミングし、到着が遅れた場合の出荷を再予約する。
HHLA(ハンブルク港湾運営者)のTUダルムシュタットは、TFG Transfracht(海運運営会社)、Hapag-Lloyd(遠洋運送業者)と提携し、コンテナETAでシステムの動きをテストするため、輸送に関する一連の関係者からデータを収集しました。入力データは次のとおり:
- ターミナルは、積み替え、再度積載、滞留、列車の積載時間、ブロックの保管キャパシティ、再積載率などが含まれる。
- 複合輸送データは、列車台数、列車サイズ、列車ごとの利用率が含まれる。
- 遠洋輸送は、輸送されたコンテナ数、および遅延時間と荷降ろし時間。
このデータを使用して、モデルに流通機能を構築しました。
モデルは、システムダイナミクスアプローチを利用して輸送の一連の流れを再現しました。船の到着からターミナル、列車までコンテナの連続的な流れをシミュレートしました。離散的かつ動的な動きは、船舶からターミナルに到着し、列車に積み込まれたコンテナをシミュレートしました。モデル作成者は、複合輸送オペレータのルールを追加するため、機能やプログラミングのような特別な機能もシステムダイナミクスモデルに追加しました。
このモデルには、コンテナETA使用のオン/オフ、複合輸送オペレータポリシィの選択、列車パラメータ(列車ごとのコンテナ、到着率など)の設定など、さまざまなモードとパラメータをグラフィカルに設定できるインターフェイスが含まれています。
結果をより良く比較するために、モデル作成者はモンテカルロシミュレーション実験を行いました。モンテカルロシミュレーション実験では、それぞれランダムに作られたパラメータで、入力数量ごとに複数のシミュレーションを実行しました。
結果:
異なるポリシィのシミュレーション結果は、コンテナETA情報の導入が、複合輸送オペレータの列車の利用効率を増加させることを示しました(写真参照)。複合輸送オペレータが方針2(積載準備コンテナの置き場を作成し、この置き場からコンテナを輸送)を選択する場合に、ETAは最も効果的と出ました。
大型船舶では、ETAを適用することで稼働率は向上しましたが、75%の許容レベルまで達成することはできませんでした。大型船舶は積み替えプロセスに影響を及ぼし、ETA導入はこのプロセスを改善するものではありません。
また、シミュレーションでは、提案されたポリシィをコンテナETAの導入なしで単独で使用しても状況は変わらないことが分かりました。
結果はワークショップで関連会社に提示されました。一部の海上輸送業界にとっては、コンテナETA導入の考え方は直感的ではないようでした。コンテナETAシミュレーションは様々な状態を改善することを証明しました。
シミュレーション結果は、コンテナETAにより、港湾当局がターミナルのコンテナ滞留時間を短縮し、複合輸送オペレータが貨物列車の稼働率を向上させ、最終的にコンテナ出荷時間を延長できることを示しました。
さらに、ハンブルク港のユーザーは、コンテナの輸出先に焦点を絞りました。コンテナETAは、コンテナ船の利用を改善することができました。
さらなる研究プランは、アジアとアメリカ港湾環境でのコンテナETA導入をテストし、ETA導入が個々のユーザーに与える経済的影響を評価することが考えられています。研究者はまた、各コンテナの動きを追跡するためにエージェント・ベースモデリング要素をシステムダイナミクスモデルに導入する予定です。