ハイブリッド・シミュレーションによる医療サポート-脳卒中専門救急車(Mobile Stroke Units)

問題点




最新の医療技術および経済影響の両面を考えるには、設計と開発の前に、評価が必要です。したがって、ハイブリッド・シミュレーションを通じて導入した意志決定支援システムは、脳卒中専門救急車 (Mobile Stroke Units)のケースに適応されます。


脳卒中は重い障害を引き起こし、治療とリハビリの高コストの負担は、老齢人口の増加でますます増えています。血栓症の多くは脳卒中を発症し、発症から4.5時間以内に血栓溶解の治療が必要になりますが、現在の搬送や病院管理では対応しきれていないのが現状です。そこで、脳卒中専門救急車(Mobile Stroke Units)が改善案として提案されました。 


脳卒中専門救急車(Mobile Stroke Units)の導入は、重い障害による高コストを防ぐ治療開始時間の短縮が目的で、発症現場で診断と治療を開始することができます。


目的




最終的な目標は、現在の状況とMSU導入による医療と経済的影響を比較し、MSUの配置を最適化することです。主なメトリクスは、救急要請から治療開始時間、コストおよび他の関連する出力パラメーターに沿った影響です。 大都市圏(ベルリン)と病院が少ない地方とでは異なる構造であるため、それらは比較検討に使われました。

MSU
図1:脳卒中専門救急車の実例


MSU Simulation

図2:MSUシナリオ動画スクリーンショット

AnyLogicでの実行




プロジェクトはAnyLogicで実現されました;モデル作成に必要な複数のシミュレーション方法論を使用するモデル開発に適しており、既存の機能に加え、モデルにJavaコードを加えることでより高度なモデルが作成でき、問題解決を可能にします。また、AnyLogicは、その分野の専門家とのコミュニケーション増大に役に立つアニメーションの生成も可能です。


図2は、MSUシナリオ・アニメーションのスクリーンショットを示します。MSUは事前に定義されたポジションに置かれ、脳卒中の場合が生じた際に、ディスパッチャーによって配車することができます。空いたMSU車両が無い場合は、通常の救急車が患者を病院へ搬送するために派遣されるでしょう。間違った決定と不必要なMSU配車(それは実際には生じる)は、様々なアクションと干渉するため、コストと同様にモデル化されます。脳卒中患者は長期的な原価分析を可能にするために機能障害後の10年間モニターされます。


エクセル・テーブルにインストールされた異なる年度の様々なパラメーターを入力ファイルとして使用することができ、シミュレーション実行の間にロードされ使用されます。ライブラリは、医療判断サポートの多数のシナリオを評価するために開発されています。異なるモジュール(例えば人口統計学)は専用シナリオに一定の特徴を加えるために接続することができます。ポジショニング・ツールはシナリオを実行する前にその領域をクリックすることにより地図上の脳卒中専門救急車(Mobile Stroke Units )および病院のホームロケーションの定義づけが可能です。下記の論文では、さらに進んだモデリングおよび実装の特徴をご覧いただけます。


モデリング・アプローチ




特に医療判断サポートのシミュレーションを実行するのに、小規模だけでなく大規模なシミュレーションはモデルの精度を高めるのに不可欠で、マルチメソッドおよびハイブリッド・シミュレーションによる役立つ方法の1つです。ディスクリート・イベントおよびエージェント・ベースの技術は個々のレベルの詳細なモデリングに適している一方、システム・ダイナミックスは全体像を映し出すモデリングに使用されます。患者はエージェントとして描写され、医療のワークフローは、人口統計学、財政および疫学の状況を描写するシステム・ダイナミックス・モデルに埋め込まれています。医療技術は定量パラメーターで表記されます。

MSU Models

図3:エージェントベースモデル、ディスクリートイベントモデル、システムダイナミックスモデルの例


結果 




このケーススタディーで出た重要な結果は、脳卒中専門救急車(Mobile Stroke Units )での血栓溶解の治療を多くの患者に行われるとは限らないということです。しかし、血栓溶解治療を行う患者は早期治療を受けることで、重い障害を免れる可能性があります。これは明らかに医療にとっての利益につながります。さらに研究では、地域に幅広く分布(一様分布)している脳卒中専門救急車(Mobile Stroke Units )のほうが、限られた場所(例えば駅や病院)に集中的に分布している場合とは対照的に良い結果を示しています。更に、シミュレーションは、わずかな病院しかないドイツの農村地域では、そのような車両が有益でないことを示しました。これは1年当たりの疾患数が少ないことに起因します。多くの人々は脳卒中を扱うことができる都会の病院の近くに生活しているためです。上記のケーススタディ結果は専門病院が少ない国々において異なるかもしれません。


結論




AnyLogicは医療判断サポートの詳細モデルの開発が可能です。脳卒中専門救急車(Mobile Stroke Units )シミュレーション・モデルは、医療および医療経済学の効果について重要な問題を解決するのに役立ちました。規制当局、企業、研究者および意思決定者は、脳卒中専門救急車(Mobile Stroke Units )導入の最適化、かつ今後の脳卒中診断および治療を改善するためにシミュレーションを利用できます。脳卒中患者の長期的なモニタリングは、投資判断の基準に従って、脳卒中専門救急車(Mobile Stroke Units )の追加費用と節約コストとの比較を可能にします。この活動は産業と学術研究機関の両方から医師、エンジニアおよび医療経済学者と協力して医療技術評価HTA(資金はドイツ政府提供)で行なわれました。


大規模な複合システム(例えば、医療、自動車、産業、エネルギー資源)のシミュレーションは、University of Erlangen-Nuremberg Computer Networks and Communication Systems Groupの専攻分野です。ご質問等がございましたら、モデル開発者にご連絡ください。


推奨出版物




  1. Djanatliev A. and German R. “Prospective Healthcare Decision-Making by Combined System Dynamics, Discrete-Event and Agent-Based Simulation”. Proceedings of the 2013 Winter Simulation Conference, Editors: R. Pasupathy, S.H. Kim, A. Tolk, R. Hill, M. Kuhl. Washington D.C./USA. December 8th – 11th, 2013, p. 270-281.
  2. Djanatliev A., Kolominsky-Rabas P., Hofmann B. M., Aisenbrey A., German R. “System Dynamics and Agent-Based Simulation for Prospective Health Technology Assessments”. Simulation and Modeling Methodologies, Technologies and Applications - Advances in Intelligent Systems and Computing. Edited by Obaidat, Mohammad; Filipe, Joaquim; Kacprzyk, Janusz; Pina, Nuno (Eds.). Volume 256, 2014, pp 85-96.
  3. Djanatliev A., German R. “Large Scale Healthcare Modeling by Hybrid Simulation Techniques using AnyLogic”. Proceedings of the 6th International ICST Conference on Simulation Tools and Techniques. Cannes/French Riviera. March 5th – 7th, 2013, p. 248-257.

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